毎日製麺

ラーメンは麺を食らう食事。主役は麺です。
スープが美味しいのも大事な事ですが、麺を箸あげした時に立つ香り、口に含んだ時のスープの第一印象、噛んだ時の食感、喉越し、そして後味と余韻。
そうした味覚の中心に存在するのが麺です。味の中心であり主役の麺を
自家製麺する事でしかたどりつけない絶妙なバランスがあります。

また、麺そのものの美味しさは、その鮮度で大きくかかわります。麺は製麺後1日~2日と半日が香り、コシ、食感を鑑み、一番美味しいです。日々来客数が異なる営業のなかで、確実に麺の美味しいタイミングを逃さないためには、自家製麺はとても重要なポイントです。

ここではもう少し掘り下げて、天までとどけの麺の解説をしていきます。

①極細麺

当店の麺はちょう~細麺です。麺は太ければ、コシや食べ応え、小麦粉感を味わえますし、茹で伸びにも強いです。逆に細ければ、食べやすさ、スープを引っ張ってくる量、のど越しの良さに差が出ます。当店のテーマは家族なので、一番に食べやすさと、スープを引っ張ってくる味の濃さを重視し、超~細麺を打つことになりました。食べやすさは、おじいちゃんおばあちゃん、お子様を意識。また食べやすさのなかにもスープをしっかり引っ張ってくることにより、若者も満足できる味を実現しています。

②実は平打ち&ちぢれ麺、そして茹できる

麺は細いと食べやすいと①でも説明しましたが、コシや、茹で伸びにはとても弱いのが弱点です、また、当店くらいの太さ(#24番・業界用語ですみません)になると、味にそうめん感が出てしまいます。そうめんみたいな味にしたいのなら、そうめんを食べれば良いわけで、当店は中華そば屋として、美味しい“中華麺”を提供したいと考えています。

また、茹で加減ですが、麺は茹できったほうが美味しいです。麺の甘味や、その甘味がスープに移る度合い、からみ、粘りなど。いわゆる“麺かため”より、断然やわらかめのほうが美味しいです。しかし、やわらかい麺のおいしさは、一瞬のおいしさで、茹でのびとともに、すぐに失われてしまいます。

食べ終わりを考えると、最後の麺のやる気の無さは尋常ではなく、味の平均点を取りにいくなら、茹で加減は普通。盛り付けや提供時間を考えると、若干の“かため”で茹でるのが最善です。

でもどうしても、その一瞬の美味しさを味わって頂きたいのです。それらを解決したのが、平打ち、ちぢれ麺です。右の図のようにすることで、茹できっても、伸びない麺。やわらかく、粘りがあるのに、しっかりとした芯があり、コシがある麺。が出来るのです。

次に麺をちぢれさせることで、口の入るときの表面積を多くし、そうめん感を軽減できます。また、ちぢれを作る工程で麺の表面に目では見えないキズができるため、麺にスープが絡むようになります。よく絡んでくれれば、①で述べた、若者でも満足できる、しっかり味を実現できるのです

③卵めん

すき焼きに玉子を使うように、濃い味、はっきりした味の中にも優しさを作り出すのに、玉子は大事なアイテムです。麺自体に旨味を与える役目もありますが、スープを柔らかくするのが、麺に入っている玉子です。小麦粉の香りや甘味と相まって、玉子の優しさがスープに移りこんではじめて、中華そばの完成です。替玉をするほど、全体の味がまろやかになっていくのは、この玉子の力が大きいです。

味の方程式

一般的に料理の味は、完成時がピークです。ラーメンで言うなら、スープがぬるくなる。スープが冷めると塩気が増す。
麺は伸びる。チャーシューなどの肉は固くなる。など、料理は出来たてが一番美味しいのです。料理人としては、いかに味のピークを持続させるか、または後ろ、後半に味のピークを作るかが腕の見せ所です。わたしも師匠から、味の一発目から勝負するなと、何度も言われました。ここでは、味のピークを食べ終わりに持っていくためのポイントについてお話ししたいと思います。

①最初は香りから

最初からまとまった、しっかりとした味で勝負すると、どうしても味は濃くなり、最後は飽きたり、くどくなります。そこで、第一走者は香りです。そこでどうしたら、良い香りが出来るかに、こだわり、当店では炊き出しスープを使います。最近のラーメン店では、美味しいピークでスープを取ってしまうお店が多いですが、味は安定しますが香りは一段落ちてしまいます。炊き出しスープを器に注ぐことにより、お客様が麺を箸あげしたときに、ふわっと、素材の香りが広がるのです。

②味は未完成のまま

①で述べたように、最初の味はまとめ過ぎないよう、味に抜けを作ります。味の最後のピースはお客様が自分のお好みで使う調味料です。調味料を使うことで、はじめて輪郭がはっきりし味がまとまるのです。また、調味料を使わなかったとしても、一定時間が経てば、麺から甘味と小麦粉の香りがスープに移りこみ、味がなじむように、まとまって行きます。

③大盛りではなく、替玉にこだわる。

当店の一押しメニューは何かと問われれば迷いなく、替玉とお答えします。自家製麺の旨さが最高に発揮されるのが替玉の後だからです。香りの強さ、まろやかさ、麺の粘りは、替玉してこそです。一旦ぬるくなったスープの温度を上げる事が出来、スープがぬるくなっている分最初の麺より、さらに茹できる事が出来る。なおかつ、麺からスープに移る旨味が倍になる。替玉あってこその天までとどけです。

地元浜松の味

地域によって様々な食文化が生まれます。地域による味の区分のポイントは川にあると思っています。今でこそ文明の発達によって川を挟んだ人の交流は当たり前ですが、遠い遠い昔から考えると、川によって分断されることで、その地域特有の食文化が生まれたと推測されます。ネットで評判の飲食店に足を運んでも、なかなかお気に入りのお店が見つからないのは、その地域特有の味付けや、味覚の差があるからです。

 

そうした観点から浜松でお店を構えるのなら、浜松で作られた醤油を柱においた中華そばを作りたいと考えていました。そこで当店では地元浜松の醤油蔵の加藤醤油さんの醤油を中心にすえた中華そばを提供しています。地元の方々にいつまでも愛されるどこか懐かしい味わいには、地元産の加藤醬油さんの醤油はかかせない存在です。

地元びいきかもしれませんが、丁寧に作られていて、本当に美味しく繊細で、綺麗な味のする醤油です。

加藤醬油情報